定款に定める事項
定款は、目的、商号、本店所在地など会社の基礎となる事項を定めます。
会社法には、定款に定めるべき事項として絶対的記載事項が、相対的記載事項、任意的記載事項が規定されています。
絶対的記載事項 | これが入っていないと定款として認められない事項 |
相対的記載事項 | 定めなくてもよいが、会社として定めるならば定款に定めなければならない事項 |
任意的記載事項 | 会社法上、定めても定めなくてもいい事項 |
絶対的記載事項 会社法で絶対に定款で定める事項をいい、これが定められていない、または定めたけれども違法の場合は、その定款全体は無効となる。「目的」、「商号」、「本店の所在地」、「設立に際して出資される財産の価額またはその最低額」、「発起人の氏名・名称または住所」、「発行可能株式総数」がその事項である。
相対的記載事項 定款に無くても定款全体は無効にならないが、定めるならば定款に定めることによって効力が生じる事項。
任意的記載事項 必ずしも定款に定める必要はなく、定款以外に定めてもよいが、定款に定めることによって、その変更が厳格な要件を要することになる。たとえば、株主総会の招集時期や取締役や監査役の員数などである。
なお、会社設立時に作成する定款を原始定款といいます。
それでは、絶対的記載事項から見て行きましょう。
(1)目的
会社の事業内容をあらわすものです。細かく決めてもいいのですが、包括的な記載でも認められます。「適法な一切の事業」など。
ただし、建設業や派遣業など官公庁の許認可を必要とする業種は、特定の業種について事業目的を入れておかないと許認可の取得ができない恐れがあります。
(2)商号
類似商号制度は廃止されましたので、同一商号同一本店でなければ登記できるようになりました。しかし、思いつきで商号を決めるのは良くないです。たとえ登記できたとしても、不正競争防止法や商標登録されていないかなども考慮すべきです。
日本語、ローマ字を使用できます。&、・も使えますが、@、/はまだ使用が認められていません。
(3)本店所在地
法人の本社の住所です。定款には区市町村単位までを表記すればいいですが、登記をするときには住所すべてを登記します。
(4)設立に際して出資する財産の価額またはその最低額
設立するときに発起人が出資する金銭およびその他の財産の価額またはその最低額である。発起人は、金銭または車や有価証券などを出資することができる。
(5)発起人の氏名・名称または住所
原始定款に発起人として署名・記名押印したものが、発起人となります。発起人には、自然人のほかに法人もなることができます。ただし、取締役には、法人はなることができません。
(6)発行可能株式総数
発行可能株式総数は、原始定款に定めていなくてもいいとされています。ただし、その場合は会社設立の登記するまでに定めることとされています。発起設立では発起人全員の同意、募集設立では創立総会の決議で決めるということです。なお、公開会社では設立時に発行する株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1以上でなければならないとされています。
相対的記載事項
取締役・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人を設置する定め、会社の存続期間の定めなどであるが、とくに重要なのが変態設立事項の定めである。変態設立事項の定めは4つある。以下に説明する。
(1)現物出資
出資は金銭によるものでも、不動産や債権、有価証券などでもよいが、合名会社・合資会社と異なり、信用出資や労務出資は認められない。金銭以外の出資を現物出資といい、発起人に限り行うことができる。定款に出資する発起人の氏名・名称、出資される財産およびその価額、ならびに現物出資者に割り当てる株式の種類・数を記載しなければならない。
(2)財産引受け
発起人が会社成立を条件として会社のために財産を譲り渡す契約をいう。これも定款に目的たる財産、その価額および譲渡人の氏名・名称を記載する。会社成立後すぐ営業できるように、土地、建物などを取得するなどの行為を、開業準備行為といい、このような開業準備行為のうち、財産引受に当たるものについては財産引受けとして処理するのが判例である。
(3)発起人の報酬および特別の利益
会社設立事務を行った対価として発起人に支払われるのが報酬であり、会社設立のために尽くした功労に対して発起人に与えられるのが、特別の利益である。
(4)設立費用
会社設立のために支出される必要な費用のことである。設立費用を無限に認めると、設立後の会社が損失を被ることになるので、一定の歯止めとして定款にその金額を定めることにした。
以上が、変態設立事項と呼ばれるものであるが、変態設立事項は危険な行為とも言われ、会社に損失を与えかねない行為であるので、定款に定める。また、①現物出資及び財産引受けの財産として記載された価額の総額が、500万円を超える場合、②市場価格のある有価証券を出資した場合、法務省令で定める方法により査定された額を超える場合、③定款に記載された額が適正であると、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人の証明がない場合は、検査役による調査が必要になります。
2016/12/23